柴田 明夫 氏(丸紅経済研究所代表)「資源争奪戦と震災日本の課題」

柴田 明夫 氏(丸紅経済研究所代表)「資源争奪戦と震災日本の課題」

質疑応答(Q&A)

質問者A:1.日本の農業用水の見通しは。2.中国の水不足の農業生産に対する影響如何。

柴田:1.日本における水の賦存状況は、約38万平方キロメートルの国土に毎年約1,700ミリメートルの降水量があり、そこから蒸発量を差し引くと約4,200億トンくらいが水資源である。その内、実際に使っているのは、農業、工業、生活用水を合わせて約800億トン、つまり五分の一くらい。
 その中で農業用水が約550億トン。その大半は食糧生産のために使われていて、それで作られる穀物が約1000万トン。ところが、約3,000万トンの穀物を輸入している。これを水に換算すると、650万トンになる。つまり、それだけの水を、食糧のかたちで輸入しているともいえる。五分の一しか使っていないこともあって、日本には水が足りないという意識はない。この650万トンも、意識しないで済んでいるのは、食糧として輸入できているからだ。しかし、ひとたび輸入が難しくなって、たとえばその半分を国内で生産しなければならいとなれば、一気に水が足りないという話しになるだろう。
 そうした農業用水も、水利予算がカットされたりしているため、メインテナンスするのがやっとという状況だ。生産調整が行われ水田が減っていくのに合わせて用水路が減ってきているから、五年、十年の先を考えると、問題だ。
 生活用水のほうは、戦後作られて40年を経過。30年で劣化するとされているのだから、メインテナンスの問題が大きい。しかし、水道技術者が絶対的に少なくなっている。
 日本では水は余っていることになっているのだが、結構問題が出てくるのではないか。
 2.もっと深刻なのは中国だ。河北平原から東北の黒竜江省、遼寧省、吉林省あたりは絶対的に水不足。一方穀倉地帯の広東省など南の方の年間降水量は、豊富だ。ただ、一年の内6月から9月の間に年間降水量の八割が集中し、その期間には洪水も起こる。10月から翌年5月は渇水期で水が足りなくなる。
 水質汚染の問題もある。人口10万人以上を「都市」と称する、その「都市」660の内500近くが水質汚染問題を抱えている。
 黄河の断流も指摘されている。1970年代から河口に水が流れてこなくなった。上流で農業用水のために取水されてしまうからだ。90年代には、断流の河口からの距離が1,000kmくらいまで伸びてしまった。そこで、上流での取水を禁止した。すると、今度は地下水を掘って取るようになり、地下水の水位がどんどん下がっている。全食糧生産に影響が出てくるだろう。
 中国では「十年九干」、つまり十年のうち九年は旱魃になるというのが北部、東北部の歴史だ。これからは、水問題がかなり複雑で深刻な問題になるだろう。
 遺伝子組み換えで、水をあまり使わなくてもよいトウモロコシを開発することなどが考えられているが、それと水不足がさらに深刻化するのとをどちらが早いかが問題だ。


質問者B:南方熊楠の著書に想を得た「萃点」のお話しの関連で、各種資源、食糧などの高価格が日本にいつどのように影響してくるのだろうか。

柴田:日本はデフレがずっと続いているが、海外では製品も資源もインフレになっている。日本においては、資源インフレが円高のバッファーでかなり緩和されている。その上に国内では消費者の安値志向が強くて、価格を下げる競争になっている。デフレは夢も希望もない、将来も値段が下がり続けるという『死に至る病』に入ってしまっている。
 しかし、世界の傾向はいずれ日本にも現われてくる。今後、いかにして資源価格などを製品に転嫁していくかが問題で、そのための運動のようなものを起こしていかないと無理だろう。日本だけが世界のベクトルを外れているわけにはいかない。

 

質問者C:国際的な資源価格の上昇と円高とが釣り合って、日本が資源を確保してきたことを考えると、あまり悲観的にならなくてもよいようにも思える。まだまだ円高が続き「1ドル30円」といったことになれば、原油価格が倍になっても耐えられる―こうした“暴論”も可能ではないか。

柴田:そういう考え方は、もちろんあり得る。私は、ドル建てで上がっている部分を利用して、新たな技術革新に向け必要な手を打つべきではないかということを言っている。要は「高い資源」を前提に、今後十年先を見てソフトな制度を含め日本の対応の仕方を確立する必要があるということであり、だから、あえて実勢価格ないし円建て価格には触れていない。

 

質問者D:1.日本の持っている資源をフル活用するという事に関連して、日本が海洋国であることをどう考えるか。2.食糧価格の高騰は政治不安を招く恐れがあり、国際機関が防護策を講ずる必要があると思うが、そうしたことについての情報はあるか。

柴田:1.200海里で見れば、日本は確かに世界で6番目の海洋資源国である。このことを改めて見直すと、海草からメタンハイドレードが取り出せることなどが考えられるし、そもそも海水そのものにウランを含めたあらゆる資源が含まれている。そう見ると、日本を資源貧国と言って捨てることも無いと思う。
 2.食糧は、世界の由々しき問題だ。70億人のうち10億人前後が飢餓に苦しんでいる。人口増に食糧が追いついていけないというマルサスの問題は、全然クリアーできていない。世界の農地の動きを見ると、50年間増えていない。開発を進める一方で改廃も進んでいるからだ。これを一気に増やすというのは、あまり現実的ではない。反収を引き上げるということがあるが、例えばアフリカでそれをやろうとしても肥料価格、灌漑コストが上がっていて、技術的可能性以前に経済的可能性で阻まれてしまう。そこで、国際的になんとかならないかということになる。短期的には、食糧に関する情報の問題、つまり情報不足によって起こる買い急ぎにどう対処するか。また、世界で共通の備蓄政策をとっていくことが考えられる。せっかく作った作物を作りっぱなしで腐らせてしまっていることもあるので、ポスト・ハーベストの流通策のため倉庫の整備などを含めた策が必要だ。
 長期的には人材をいかに育てるかだ。日本の若者も、海外で経験をしてそれを国内に戻って活かすということをもっとするようになればいい。いろんな“血”を入れて多様な農業にしていかねばなるまい。

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